【Flutter】iOS実機で「mprotect failed: Permission denied」エラーが出た時の解決方法
Contents
はじめに
Flutter開発中、iOS実機でアプリを実行しようとしたら突然クラッシュ。Xcodeのコンソールには見慣れないエラーが…
|
1 2 |
mprotect failed: 13 (Permission denied) Crash occurred when compiling unknown function in unoptimized JIT mode |
この記事では、このエラーの原因と解決方法を詳しく解説します。
エラーの全文
実際に表示されるエラーは以下のようなものです:
|
1 2 3 4 5 6 |
../../../flutter/third_party/dart/runtime/vm/virtual_memory_posix.cc: 428: error: mprotect failed: 13 (Permission denied) version=3.6.0 (stable) on "ios_arm64" os=ios, arch=arm64, comp=no, sim=no -- End of DumpStackTrace === Crash occurred when compiling unknown function in unoptimized JIT mode in unknown pass === Flow Graph not available |
原因
JITコンパイルとは
FlutterのDebugモードでは、JIT(Just-In-Time)コンパイルという技術を使用しています。これは:
- コードを実行時にメモリ上でコンパイル
- ホットリロード(コード変更の即時反映)を可能にする
- 開発効率を大幅に向上させる
iOSのセキュリティ制限
iOSは非常に厳格なセキュリティポリシーを持っています。mprotectはメモリ領域の保護属性を変更するシステムコールですが、iOSでは実行可能なコードをメモリ上で動的に生成することを厳しく制限しています。
JITコンパイルは本質的に「メモリ上でコードを生成して実行」するため、この制限と衝突します。
なぜ突然発生するのか
通常、Xcodeからデバッガ接続状態で起動すると、特別な権限(entitlement)が一時的に付与されJITが許可されます。しかし、以下の状況で権限が正しく付与されなくなることがあります:
- JITスロットの枯渇:デバッグ実行を繰り返すとスロットが消費される
- デバイスの状態変化:再起動やアップデート後
- 接続の問題:USB/WiFi接続が不安定
- ホーム画面からの起動:デバッガ接続なしで起動した場合
解決方法
方法1:デバイスを再起動
最も簡単な方法です。iPhoneの電源を完全にオフにして、再度オンにしてください。JITスロットがリセットされます。
方法2:Xcodeからデバッガ接続状態で実行
重要なポイントは、Xcodeの「Run」ボタンから起動することです。
- Xcodeで
Runner.xcworkspaceを開く - 実機を選択
- ▶(Run)ボタンをクリック
ホーム画面からアプリアイコンをタップして起動すると、デバッガ接続がないためJIT権限が付与されません。
方法3:Releaseモードで実行
ReleaseモードはAOT(Ahead-Of-Time)コンパイルを使用するため、JITの問題が発生しません。
コマンドラインから:
|
1 |
flutter run --release |
Xcodeから:
- Product → Scheme → Edit Scheme
- 左側の「Run」を選択
- 「Info」タブをクリック
- 「Build Configuration」をReleaseに変更
- 「Close」をクリックして実行
方法4:デバイスの再ペアリング
上記で解決しない場合:
- Xcode → Window → Devices and Simulators
- デバイスを右クリック → 「Unpair Device」
- USBケーブルを抜く
- 5秒待って再接続
- iPhoneで「信頼」をタップ
方法5:クリーンビルド
|
1 2 3 4 5 |
flutter clean rm -rf ios/Pods ios/Podfile.lock flutter pub get cd ios && pod install && cd .. flutter run |
DebugモードとReleaseモードの違い
| 項目 | Debugモード | Releaseモード |
|---|---|---|
| コンパイル方式 | JIT(実行時コンパイル) | AOT(事前コンパイル) |
| ホットリロード | ○ 可能 | × 不可 |
| 実行速度 | 遅い | 速い |
| アプリサイズ | 大きい | 小さい |
| iOS実機での安定性 | JIT制限の影響あり | 安定 |
なぜAndroidでは起きないのか
Androidはこのような厳格なJIT制限がありません。そのため、DebugモードでもReleaseモードでも問題なく実行できます。
これはiOS特有の問題であり、AppleのApp Storeで配布されるアプリはすべてAOTコンパイルされているため、一般ユーザーがこの問題に遭遇することはありません。
予防策
- テスト時は常にXcodeのRunボタンから起動する
- ホーム画面からの起動は避ける(Releaseビルド以外)
- 長時間のデバッグ後はデバイスを再起動する習慣をつける
- 不安定な場合は早めにReleaseモードに切り替えてテスト
まとめ
mprotect failed: Permission deniedエラーは、コードの問題ではなく、iOSのセキュリティ機能とFlutterのJITコンパイルの衝突が原因です。
解決策としては:
- デバイスの再起動
- Xcodeからデバッガ接続状態で実行
- Releaseモードで実行
iOS開発では比較的よくある問題なので、慌てずに対処しましょう。







ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません